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● トーマシ・ツァビエルハ インタヴュー


Tomasz Zawierucha

1973年ポーランド生まれ。第45回東京国際ギターコンクール第1位の余韻がまだ抜けない翌年2月にレコーディングで来日、今年秋にはジャパン・ツアーがある。

---新井---
今回はレコーディングと出版の仕事での来日ということですが。

---ツァビエルハ---
はい。実は去年のコンクールは受けるか否か迷っていたのですが、一昨年の時、現代ギター編集長からレコーディングと出版の話が持ち上がって11月に日本に来ることを決めたのです。行くなら受けようと。しかし思わぬ良い結果となってコンクールの後に浜松のヤマハに行ったりして約束の仕事が出来なくなってしまって2月の来日が急遽決まったわけです。

---新井---
まずは生い立ちからお願いします。 

---ツァビエルハ---
1973年8月23日ポーランドのポツナンで生まれました。ギター14歳から始めました。はじめについた先生はギゼラ・エルマノヴィチ先生です。I・J パデレフスキー・ミュージック・アカデミーで習い始めました。エルマノヴィチ女史はポーランド最大のティシー市ギター音楽祭“シレジアの秋”のディレクターです。その間女史の他2人の先生にも指導を受けました。その後、ドイツのヴァイマール音楽大学です。

---新井---
ドイツのヴァイマール音楽大学を選んだ理由はなんですか?

---ツァビエルハ---
1998年ヴァイマールで行われたアンナ・マリアコンクールで入賞したときに、東欧人に送られる特別奨学金を得ることが出来たのです。その奨学金とは、半年間ヴァイマールで勉強できるというもので、ポーランドのミュージック・アカデミーを休学してその奨学金を使いました。言ってみれば体験入学みたいなものでしょうか。その後一度ポーランドに戻ってミュージック・アカデミーのディプロマ試験を受けて最優秀で合格し、本格的にヴァイマール音楽大学へ入学しました。

---新井---
ヴァイマール音楽大学ではどの先生に師事したのですか。

---ツァビエルハ---
モニカ・ロスト女史とトーマス・ミュラー=ペリング教授にも師事していてに半年後にはミュラー=ペリング教授だけになりました。今はコンサート試験科で試験は2回それぞれ異なったプログラムでのソロリサイタルです。

---新井---
レコーディングはいかがでしたか?今回は現代ギターレーベル初の外国人録音ということなのですが2月18日、20日の2日間で録音したそうですね。

---ツァビエルハ---
はい。 “ファースト・ガイジーン”(笑)ということではりきりましたよ。本格的なレコーディングはこれが初めてです。東京のくにたち市民芸術ホールで録音してきました。スタッフの皆さんも親切で気持ちよく弾くことが出来ました。

---新井---
ということは本格的じゃないレコーディングもあるんですか(笑)。

---ツァビエルハ---
歌のバリトンとのレコーディングに参加したことはあります。

---新井---
編集は立ち会わなかったのですね。

---ツァビエルハ---
時間がなかったので無理でした。ギタリストのミスターケズカは録音の方でもプロフェッショナルで出来上がりがとても楽しみです。

---新井---
練習時間はどのくらいですか?

---ツァビエルハ---
毎日平均4時間くらいでしょうか。まずは40分テクニック練習をしています。全く基本的なもの。レガート(スラー)、スケール、トレモロなど。

---新井---
アルペジョは?

---ツァビエルハ---
アルペジョ?うーんたまに。あんまり好きじゃない(笑)。

---新井---
新しい曲に取りかかるときや暗譜の練習方法はありますか。

---ツァビエルハ---
とにかく楽譜を読みます。東京国際の課題曲だったカズコ・ハラの曲は全く未知の曲だったのですが、電車の中でアナライズしたり、もちろん楽器がないと本格的に解釈、技術的な問題は解決しませんけど、大変貴重な時間です。暗譜も楽譜を読みながらイメージトレーニングもかねて行います。

---新井---
君がレコーディングした“3つのテントス”だけど、私の師でもあったゾーラン・デュキッチ氏がコンサート移動中の飛行機で初めて楽譜を読んで、ついた日にホテルで夜中に練習していたら苦情がきて近くの川沿いで徹夜で弾いて、次の日は全く別の曲を弾いて、帰りの飛行機は楽譜で暗譜の練習をして、コンクールの課題曲であるその曲を演奏して優勝!!おまけにベスト課題曲賞ももらったって逸話があるよ。あの難曲を2日で!!あ、これは君の師匠のミュラー=ペリング教授から聴いたんだっけ!

---ツァビエルハ---
それはすごぎる(笑)!!まえに指揮者志望の学生とルームシェアしていたことがあるんですが、彼の練習方法はスコアを読んでずーっと指揮しながら歌っていた。それを彼から盗んで練習に取り入れています。

---新井---
指揮者の個人練習を見るのはギタリストにとって珍しいことですね。

---ツァビエルハ---
また今回レコーディングした“砂山変化”は1月中旬に現代ギター社から楽譜を送ってもらいましたが、今回まさに前出のゾーランのように飛行機で譜読みをして日本で練習して録音しました。コンサートではアンコールで弾きましたが。

---新井---
サタニスラフ・ムロンスキーという日本では無名の作曲家の作品を2曲入れていますね。

---ツァビエルハ---
彼はポーランド人で1972年のパリ国際ギターコンクール作曲部門で1位になった人です。ギタリストではありません。マズルカはショパン的、トッカティーナはトレモロが入ったヴィルトゥオーゾ音楽。現代ギター出版から楽譜が出る予定です。

---新井---
室内楽などは?

---ツァビエルハ---
私の妻がヴァイオリニストということもあってデュオはもちろん彼女が組んでいる弦楽カルッテットと一緒にボッケリーニやブローウェルなどのギタークインテットをすることもあります。ギターデュオでは私の恩師トーマス・ミュラー=ペリング教授と一緒に仕事をしています。5月にポーランドのグリフィッツェ音楽祭でポンセの“南の協奏曲”を演奏します。この音楽祭はポーランドの現代ギター誌(笑)である“シュヴィアト・ギタリー(ギターの世界)”の編集長がオルガナイザーです。

---新井---
将来のプランは?

---ツァビエルハ---
子供5人くらいほしいですね。

---新井---
いや、そーいうんじゃなくて!!ギターで。

---ツァビエルハ---
コンサートはイタリア、フランス、ポーランド、ドイツ、それと今年秋から日本でのヤマハコンサートツアー。今年は充実しています。

---新井---
ヤマハコンサートツアーではもちろんヤマハのギターで弾くんですよね。

---ツァビエルハ---
そう。モデルGC71。東京国際の後、浜松のヤマハにいって選んできました。このギターはツアーの後返します。その他の所有ギターは賞品のサクライ・コーノ、レコーディングではゲルノット・ヴァーグナー2002(ドイツ)を使いました。今まではカール=ハインツ・レーミヒ(ドイツ)やユーイチ・イマイも使ってました。コンクールではレーミヒでした。

---新井---
ゲルノット・ヴァーグナーという製作家は日本では無名ですね。僕はドイツにいたころも聞いたことがないのですが。

---ツァビエルハ---
彼はバルエコ氏やラッセル氏が現在使っているマティアス・ダマンの工房にいました。今は独立していて彼のオリジナルモデル。少しダマンに似ています。

---新井---
他に何か言い残すことは(笑)?

---ツァビエルハ---
食事がおいしかったです。スシ、ラーメン、ヤキサカーナ(焼き魚)など色々食べました。あとコンクールのときから製作家の野辺さん一家には大変お世話になりました。もちろん現代ギターの皆さんも大変感謝しています。今年の秋のツアーでもいろいろお世話になると思いますのでよろしくお願いいたします。

---新井---
CDも東京国際の課題曲“砂山変化”が入っていて、売れると思いますよ。今日はありがとうございました。ジェンクェ!!(ありがとう!!ポーランド語)

---ツァビエルハ---
プローシェ!!(どういたしまして!!)

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